しんとらの雑記帳

スケートメイン

雑ー表現考

「表現力」については、解説で多様される用語ですが、意外と重層的で複雑な言葉だと考えています。今回は、フィギュアスケートの「表現」について、音楽経験あり、ダンス経験なし、スケート経験なしの筆者が私見を述べたいと思います。

 

1 表現の内実

①選曲

②音源

③振り付け

④振り付けの実施の成熟度

⑤スケーティングスキル

⑥ボディームーブメント

に分けられると思います。表現は選曲の段階から始まっているというのが、私の考えです。

 

2 個別検討

①選曲

チャレンジのシーズン以外は、その選手のスタイルに合った曲が望ましい。シームレスな動きが魅力的な選手に、タンゴのような歯切れ良い音楽は不釣り合いに見えるし、大きなスケーティングで魅せる選手が、細かい音が多い曲を滑るのもいかがとも思います。表現の幅を広げる意味では重要だけれども、選手の特徴を引き出す選曲ができるかどうかで、演技の印象もかなり変わって来るはずです。いい音楽を選んだ選手のPCSが出るのは、これが一因でしょう。

②音源

有名な曲になればなるほど、様々なテンポ、レパートリーが存在します。レピストが09-10シーズンのFPに滑ったアディオスノニーノや、高橋大輔が滑ったスワンレイクのヒップホップバージョンなど、従来の音源と違うものを使うことで、新たな解釈、価値、表現が生まれてきます。原曲がピアノ曲だけれども、オーケストラ版を採用したりするなど、音源選択の余地は多分にあろうかと考えています。

③振り付け

音楽も平坦ではなく、盛り上がる部分(音が稠密である部分)と、つなぎの部分(音が少ない部分)があり、テンポも多様です。それに即してエレメンツを配置し、ドラマ性を作り上げるのが振付師の仕事だと思います。特に音の高低が激しい部分では、体の上下運動が欲しいなど、音楽の流れ、状態と、スケーターの動きが一体となるよう振り付ける必要があるでしょう。

④成熟度

振付師の仕事を、自分なりに消化し、自分のものとして取り込み、昇華させる作業を指します。ここら辺は練習でどうにかするほかないと思いますが、振付師の意図をスケーター自身が考えてみるのも有用でしょう。

⑤スケーティングスキル

私は、スケーティングと音楽の主旋律が調和しているのがベストだと思います。陳腐ですが、演技の根幹にあるのはいいスケーティングであり、それに様々な動作が加わることで素晴らしい作品が完成すると思っているためです。まずスケーティングを磨けというのは、技術向上のほかにも、表現向上に資する所以はここにあると考えています。

⑥ボディームーブメント

音楽には主旋律のほかに、多様な音が存在します。それを表現するのが、腕・手の動きや上半身全体を使った動きであると思います。この多様性が作品に深みを生み、さらなる感動を与える要素になるでしょう。ここはいわば余力のある選手が充実させる部分で、トップスケーターほど、複雑で多様な動きを取り入れています。このボディームーブメントが表現全体に解釈されることが多いですが、その一つであることは意識すべきでしょう。

 

〈加筆〉2020年1月24日

 最近、フィギュアスケートでいうところの「表現力」は、遂行力・実施力に近いようなものではないかと感じています。振り付け師が事前に振り付けたプログラムを、どれくらい同じ水準で観客に提示できるか、その実施が表現の評価になっていると考えているからです。音楽でいう譜面通り、書道でいう手本通りに近いというとわかりやすいかもしれません。

 

※字幕付きでご覧ください。

メリチャリ 全米2014FD

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以上雑多に意見を述べてきました。素人意見で賛否あるでしょうが、今の私はこう考えているということが伝われば幸いです。