0 はじめに
世界選手権開幕まで残り2日となりました。4年ぶりの日本開催、時差のない大会、日本勢のメダル獲得が期待される大会ということもあって、ライブで大会を見ようという方も多いのではと思います。この記事では、ペアに興味を持っている、またペアのルールについて知りたい方に向けて、ペアのエレメンツや採点方法を、動画や画像を交えながらできるだけ簡潔に紹介したいと思います。
1 ペアのエレメンツとは?
フィギュアスケートは、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4カテゴリーからなります。ショートプログラムとフリースケーティングの2つのプログラムを実施するのはシングルと同じですが、2人で行うという点で異なります。22-23シーズン以前は、ペアとアイスダンスの1番の違いとしてジャンプの有無があげられましたが、今シーズンから、アイスダンスにコレオグラフィック・アシステッド・ジャンプ・ムーブメントが導入され、ジャンプが認められるようになりました。とはいえ、アイスダンスの技の中心はステップであり、技の構成の点からみるとペアとアイスダンスは違った競技だといえるでしょう。
では、ペアという競技で実施されるエレメンツにはどのようなものがあるでしょうか。ここでは7つに分けて紹介したいと思います。
1-1 ソロジャンプ
2人が同じジャンプを同じタイミングで跳ぶもの、それがソロジャンプです。ジャンプの基礎点はシングルと同じですが、高さや流れに加えて2人のユニゾンも評価されるのがペアの特徴です。今シーズンの大会を見ると、3T/3Sを取り入れるカップルが多いですが、近年は3Lzなどより高難度のジャンプを入れるカップルも出てきています。比較的ミスが出やすいエレメンツで、このエレメンツを成功させることができるかどうかがメダル争い、上位入賞に大きくかかわってきます。
◆もっと知りたいソロジャンプ
①基礎点
②GOE評価基準
1-2 ツイストリフト (Tw)
男性が女性をほぼ真上に投げてキャッチする要素、それがツイストリフトです。ペアにしかなく、プログラムの冒頭に組み込むカップルが多い要素です。
このツイストリフトで1番重要なのはキャッチの部分です。よいとされているのは、「女子の(両)手、(両)腕、上体のいずれの部分も男子に触れることなく男子がウエストの側面で女子をキャッチ」するもので、抱え込むようなものはGOEでマイナス評価となります。
〈GOEプラス評価の例〉
〈GOEマイナス評価の例〉
このエレメンツはレベルが取りにくく、Lv4を獲得できるカップルは多くありません。GOEがマイナス評価となることもままあるエレメンツですので、きれいに決まったら大きな拍手で選手を称えましょう。
◆もっと知りたいツイストリフト
ツイストリフトのレベル要件、GOEの評価項目などについては、下記の記事で詳しく述べていますので、興味がある方はご覧ください。
1-3 スロージャンプ (Th)
男性が女性を真上ではない方向になげる要素、それがスロージャンプです。5種類のタイプがあるのはシングルのジャンプと同じですが、基礎点の設定がシングルと異なります。(ペアでは3TThと3STh、3FThと3LzThの基礎点が同じです)
2人の呼吸が合わないと成功できないという点で、ペアの醍醐味といえるエレメンツです。高さと幅が注目ポイントで、多くのカップルが3Loか、3F/3Lzを選択します。
1-4 スピン
ペアにおいてスピンは接触の有無で2つに分けることができ、2人が接触して行うスピンをペアスピン(ペアスピンコンビネーション)、2人が接触しないで行うスピンをソロスピン(ソロスピンコンビネーション)と呼びます。
〈ペアスピン〉
〈ソロスピン〉
ソロスピンは比較的レベルを取りやすいエレメンツですが、2人のタイミングがぴったりとあったカップルはあまり多くありません。ユニゾンや2人の距離感がよいかどうかに注目するとわかりやすいです。今季のSPではソロスピン、FPではペアスピンを実施することがルール上規定されています。
◆コーチの掛け声に合わせてスピンのポジションが変わるカップルもいるので、現地で観戦される方は音にも注目してみてください。
1-5 デススパイラル(Ds)
男性が女性の手を取り、コンパスのように円を描きながら滑るのがデススパイラルです。デススパイラルはレベルおよびGOEが取りにくく、差がつきやすいエレメンツです。カップルによって出入に独創性、個性がでるので、そこに注目してみると楽しめると思います。
◆もっと知りたいデススパイラル
デススパイラルの見分け方、レベル要件、GOEの評価など詳しいことが知りたい方は、下記記事を参考ください。
1-6 リフト(Li)
男性が女性を持ち上げて、回転し、降ろす要素がリフト。SPでは1つ、FPでは3つのリフトを行うことが規定されており、また基礎点の高いエレメンツであるので、リフトをいかに質よく実施するかがペアで高い技術点を出すうえで最も重要なことになります。女性のポジション、スピード、アイスカバレッジに注目すると面白いと思います。
◆もっと知りたいリフト
リフトの種類、レベル要件について詳しく知りたい方は、下記記事を参照ください。
1-7 ステップシークエンス/コレオグラフィックシークエンス
ペアではSPでステップシークエンス(レベルあり)を、FPでコレオグラフィックシークエンス(基礎点固定)を実施することが規定されています。2人の距離感、同調性に注目してみましょう。
2 今シーズンのエレメンツ規定
ペアにどのようなエレメンツがあるか述べてきましたが、ここでは今シーズンのエレメンツ規定についてみていきたいと思います。
〈SP〉
https://www.usfigureskating.org/sites/default/files/media-files/2022-23%20Pairs%20SP%20Chart.pdf
ペアSPは7つの要素からなります。
①ソロジャンプ:2~3回転、種類はどれでもOK。
②ツイストリフト:2回転か3回転の限定あり。
③スロージャンプ:種類はなんでもよいが、SPでは2回転か3回転。
④スピン:2人が接触しないで行う、ソロスピンコンビネーション。
⑤デススパイラル:Backward Inside【BiDs】。
⑥リフト:グループ5リフト。
⑦ステップシークエンス
〈FP〉
https://www.usfigureskating.org/sites/default/files/media-files/2022-23%20Pairs%20FS%20Chart.pdf
ペアFPは11要素からなります。
①-A ソロジャンプ
-B コンビネーションジャンプorジャンプシークエンス
◆回転数の制限なし。ソロジャンプとコンビネーションジャンプは違う種類でないとだめ。
②ツイストリフト:4回転ツイストが解禁
③スロージャンプ2:回転数の制限なし。違う種類のものでないとだめ。
④スピン:2人が接触して行う、ペアスピンコンビネーション。
⑤デススパイラル:Backward Inside【BiDs】以外の3種類から選択。
⑥リフト3
⑦コレオグラフィックシークエンス
3 得点目安
〈SP〉TES+PCSの合計得点が
60点台中盤~後半:TOP10
70点付近:TOP5
70点代後半:優勝争い
〈FP〉TES+PCSの合計得点が
110点代中盤~後半:TOP10
120点代:TOP5
130点代:TOP3
4 おわりに
2人のユニゾン、ダイナミックなエレメンツ。ペアにしかない魅力がたくさんあります。日本で開催される世界選手権、ペアも見てみませんか?