ソチから平昌までの女子シングルを振り返る
年度末なのでその2。ほぼほぼ個人の回想で、正確性は保証しません。
以下敬称略。
ソチが終わって、ヨナの引退、真央、カロリーナの休養と、これまでトップを引っ張ってきた選手が競技会から離れ、新たな時代に入ったと感じていました。
まずは14-15シーズン。このシーズンはリーザとラジオノワの安定感が光り、二人がGPF、ユーロ、ワールドの表彰台から漏れたことはありませんでした。特にリーザがワールドのSPでクリーンな3Aを決めたことは特筆すべきでしょう。また他の海外勢に目を向けると、アメリカはアシュリーとグレイシーの二強状態で拮抗、カナダはアレイン、オズモンド、デールマンの三強という状況。日本は宮原、本郷の台頭が目立ったシーズンだったと思います。GPF進出者、ワールドの順位からわかるように、上位争いはロシア、アメリカ、日本の選手が中心に展開されました。
次に15-16シーズン。このシーズンはメドベデワの躍進が光るシーズンであるとともに、14-15シーズンで結果を残した選手が、さらなる結果を出したシーズンだったと思います。また真央の現役復帰も忘れてはいけない事項。ロシアはメドベデワとラジオノワが双璧、ポゴリラヤの評価が高まったシーズン、アメリカはアシュリー、ゴールドの評価がさらに高まり、エドモンズが二人に割って入ったシーズン、カナダは三強時代継続、日本は宮原の独走が始まったシーズンであり、樋口が台頭したシーズンだったと思います。
次に16-17シーズン。このシーズンはカナダ勢の躍進がまず挙げられます。オズモンドはSP、FP良プロをそろえ、かつ比較的ジャンプも安定したことから一気にスコアが伸び、デールマンはワールドで会心の演技を行い、四大陸に引き続いてメダルを獲得、トップグループに加わったシーズンになりました。アメリカ勢もカレンの躍進、長洲の復活と、代表争いが熾烈に、日本も三原、本田、坂本の台頭が見られたシーズンになりました。ロシアはメドベデワの独走、ザギトワ。ソツコワの台頭、ラジオノワ、ポゴリラヤも国際大会の表彰台を獲得するなど、ロシアの強さがシニア、ジュニア両方に見られました。
最後に17-18シーズン。すべての大会を見られたわけではありませんが、基本的にはこれまでのシーズンで台頭した選手が五輪でメダルを争う形になりました。ただ一人、テネルがGPSから安定した演技を実施し、代表に入ったことを除いて。メダルはザギトワ、メドベデワ、オズモンドに。一方ジュニアでは引き続き日露を主軸に、韓国勢がそこに加わる形に。トゥルソワの2クワドは衝撃でしたね。
ここまでは実は前座で、ここからが本題。
14-15、15-16シーズンの間に一つ大きな壁があると感じています。というのも、14-15シーズンは「ノーミス」を争う戦い、つまりノーミスであれば優勝できたのに対し、15-16シーズンでは、ノーミスを前提とした「ノーミスの中のノーミス」を争う戦いに変化したと感じています。多くの選手が3-3を当たり前のように決め、演技面でも個性を存分に発揮する。それが15-16シーズンから顕著にみられました。16-17、17-18シーズンも基本的にはこの枠組みが継続し、各選手がエレメンツの質、演技の質を高めあう戦いになりました。ノーミスの演技が体感増えたのは間違いないことだと思いますし、回転不足やエッジエラーの有無、GOEとPCSの重要性がより認識されるようになったと感じています。その中で後半にジャンプを集中して基礎点アップを図る戦略であったり、多回転の導入が一部トップで始まったのは、これまでの枠組みから一歩突き抜けたような取り組みで、新たな時代への始まりを感じさせる出来事でした。ただ導入選手が少ないこと、またルール変更もあるので、しばらくはノーミス同士の殴り合いという状況は変わらないと思います。おそらく変わるとしたら18-19シーズンではなく、19-20シーズンからでしょう。
もう一つ感じたのは、GOEについてです。14-15シーズンはノーミスかつ+1以上各エレメンツで稼ぐことが目安だったのに対し、16-17シーズンからはノーミスかつ+2以上が表彰台争いに要求されるようになったことは大きな変化だったと思います(もちろん14-15シーズンでも優勝にはノーミスかつ+2以上が必要だったとは思いますが、表彰台争いはここまでシビアではなかったという感覚です)。これは選手自身の取り組みの成果であるとともに、ジャッジが加点項目を積極的に認めていたことも大きいのではないかと考えています。18-19シーズンから10段階で評価されることがほぼ確定していますが、これまでとGOEをできるだけ取るという方針は変わらないことでしょう。具体的にISUから評価基準が公開されたらまた取り上げたいと思います。
ここまでとりとめもなくつらつら書いてきましたが、ソチから平昌までの間に、技術、演技両面での質がとてつもなく向上しました。平昌から北京の四年間、技術はさらに進歩し、演技の質はさらに向上するでしょう。その4年間を楽しみに待ちたいと思います。