しんとらの雑記帳

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GOE11段階制で何が変わるか

テクニカルハンドブックが一向に出そうにないので、分かるところだけをかいつまんで私見を述べたいと思います。

 

以下、下記コミュニケーションを参照しています。

https://www.jsfresults.com/data/fs/pdfs/comm/comm2168j_ver2.pdf

 

まず、ISUの歴史上、今回のGOE改正は1つの大きな転機となることは間違いありません。新採点が導入されてから15年余り続いた制度が変更されることからも明らかでしょう。

 

GOE含め、採点はルールブックに書かれていることと、実際の演技に対する採点を対照させなければ論じ難いところがある、つまり運用がなされていない段階での意見が、どれほど正鵠を射ているのか怪しいのですが、一応の展望を記すことに意味はあると思うので、文章として残しておこうと思います。

 

まずここ数年のGOEの歴史を振り返ると、バンクーバー以降、特に平昌シーズン前後に+3がかなり出るようになったのではないかと思います。統計を取っているわけではないのですが、積極的にジャッジがプラス要件を認めてきたことに異論もないかと思います。特にアイスダンスにおいては、上位陣のGOEが極めて近似し、差別化が難しい状況にありました。シングルでもそうですが、これは質の高さを生んだ一方で、見た目以上に差が生まれずらいと言う問題を残し、これを是正しようとしたのが今回の改正の目的の1つであったと考えています。つまり、ジャンプの質や創意工夫をより採点に反映させようということです。

 

もう一点は、GOEプラスの「門戸開放」ともいうべき、多くの選手がプラスを得るシステムの構築がなされた点にあります。従来は二項目満たさなければプラス評価が得られなかったわけですが、今回の改正では一項目を満たせばプラス評価にできるようになりました。GOE0と付けられていた部分が、GOE1になる可能性を秘めており、「中堅選手」には追い風になるでしょう。

 

こうした2点のポジティブな面に対し、転倒や回転不足に対する罰則評価も厳しくなったのも、今回の制度の特色と言えます。とりわけ、基礎点によってGOE幅が変わるということで、高難度ジャンプを入れることで技術点の底上げを狙っていた選手にとっては向かい風、逆に言えば、精度の高いものを積極的に評価するという面を全面的に出しているといえるでしょう。男子のクワド時代の変質、ペアにおけるクワドスローの減少が予想されますが、これは怪我のリスクも考えてのことでしょう。

 

以上簡単にではありますが、運用以前の現段階において想定されることを述べてきました。差別化と「門戸開放」、罰則規定の厳格化が今回の制度の肝だと私は理解しています。実際に運用された時の感想は、また後日書き記したいと思います。