しんとらの雑記帳

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雑考―ルール改正で何が変わったか

0 はじめに

国別が終わり、18-19シーズンのメジャーな大会が終わったので、今期の振り返りも込めて、ルール改正の印象を述べていきたいと思います。

【昨シーズンの振り返り】

shintorasports.hatenablog.com

【運用段階以前の予想】

shintorasports.hatenablog.com

1 GOE11段階制

【参考】レベル要件

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https://www.jsfresults.com/data/fs/pdfs/comm/comm2186j.pdf

GOE11段階制を導入することで予想される結果として、①差別化②「門戸開放」③罰則規定の厳格化の3点を指摘しました。

①差別化:±0~+5まで幅ができたことで、これまでよりもより明確に差をつけることには成功しているように思います。+5も予想よりかは出ていますが、シングルに限っていえばまだ+4、+5がずらっと並ぶ状況ではまだありません。

②「門戸開放」:統計をとったわけではないので、あくまでも印象ですが、プロトコルから「0」が少なくなった印象を受けます(少なくとも全ジャッジが「0」を付けるようなことはなくなったように見えます)。プラスマイナスをはっきりつけるようになったことで、結果的にこれまで±0とまりだったエレメンツにも、どこが評価されているか明確になってように感じます。

③罰則規定の厳格化:多回転の転倒のGOEが増えたことから、多回転が減るかと予想しましたが、現実としては多回転が減ってはいません。ペアではスロー4回転や4回転ツイストをやるカップルはほとんどいないですが、男子ではクワド時代が続いていますし、女子にも多回転の波が少し来ている印象です。多回転のGOEを見てみると、3回転ジャンプよりもGOEの認定がやや甘めに見えるので、着氷しさえすればGOEの恩恵が大きいことが影響していると考えています。

2 基礎点

多回転の基礎点が減りましたが、それでもなお基礎点に占めるジャンプの割合が大きいので、以前とそれほど状況が変わったとは思いません。また今季からChSqの基礎点があがりましたが、StSqの満点5.85、ChSqの満点5.5は個人的には納得いきません。ChSqの点数をあげるのはいいのですが、要素が詰まったStSqとの差が少なすぎるように感じます。StSqの基礎点はもう少し引き上げてもよいと思います。

3 FPの時間

今季から、すべてのカテゴリーでFPが4分に統一されました。男子はジャンプ、ペアはスピンが1つずつ減りましたが、やはり窮屈さはぬぐえません。限りある時間で表現をとのことでしょうが、まだ試行錯誤の段階に見えます。これは今後に期待ですね。

4 後半ジャンプの制限

今季からSPは1つ、FPは3つまでボーナスがつく形となりました。これはプログラムのエレメンツ配置の多様性を狙っての事でしょうが、結果的にはそれほど芳しい成果を上げているように見えません。逆にプログラム構成の自由度を奪っているように見えるので、はたしてISUの意図とは逆の方向に作用しているように感じます。

5 今後の展望

シングルに関しては、GOE11段階制が採用されたことで、結果としてTESに占めるジャンプの得点が増加し、以前よりもジャンプの重要性が増しているように思います。北京までにどのようなルール改正があるかはわかりませんが、FPのTESに占めるジャンプの割合があまりにも高すぎるのは、改善の余地があると考えています。ISUがどのような方向性を提示するのか見守りたいと思います。