しんとらの雑記帳

スケートメイン

ロシア女子の育成方法についての一試論

ロシア女子をここ数年見てきて、どのような育成がなされているか考えてきたまとめを投下します。

 

まずロシアでは技術をいち早く習得させる傾向にあると思います。技術習得が表現習得よりも圧倒的に早い。ロシア国内では純粋にエレメンツのみを評価する競技があることからもそれがうかがえると思います。またシニアの成功体験が下の世代に浸透するのがものすごく速いです。たとえばメドベデワが片手(両手)をあげるジャンプで加点を稼いだことが評価されたあたりから、ジュニア、ノービス世代でもタノが見られるようになり、今季のArt.takenでは何もせずにジャンプを飛んでいる選手の方が少ないと思われるほど、手をあげるジャンプが普及しました。

 

こうしてトップ選手は、ノービスAで大体3-3を跳べるようになり、スケーティングの強化に移行していくと思います。ジャンプ技術を安定させてからスケーティング、ステップを磨くのが最近のトレンドだと思います。これが安定すればTESはもちろん、PCSにも寄与するわけで、JrGPSデビュー頃にはジュニアトップを狙える選手がバンバン出てくる状況になっています。ロシアでは割とスケーティング重視の採点を行っているのも影響しているかもしれません。

 

スケーティングの強化とほぼ同時並行に、表現面の強化も行っていると思います。もちろん表現のベースとなる部分については幼少期から訓練されていると思いますが、プログラムの細部まで洗練させるのは、技術が固まってからだという印象があります。ここまではシニア2~3年目までを想定しています。

 

問題は体型変化が起きたあとで、スケーティングはパワーアップするものの、ジャンプがどうしても不安定になりがちになり、ジャンプの安定しているジュニア、シニア若手と比べると点数面で苦しい部分が出てきます。強者がいない国ならベテランが十分活躍できますが、今のロシアは一寸先は闇というような、とにかくすごいスケーターが次々と生まれています。このような状況の中で競技生活から引退をする選手も多く、ここ数年ロシアナショナルの表彰台はすべて10代選手で占められています。

 

技術の頂点と表現の成熟の時期のアンバランスが、今のロシア女子の現状でしょう。

 

一方北米では、じっくりと育成を行う傾向があります。ジュニア時代よりもシニア時代に成果を残す選手が多いのはこのあらわれで、考え方の違いでもあるでしょうし、国内での競争具合の違いも影響していると思います。

 

どちらの方式がいいかについては結論が出ません。ただどちらの考えが誤っているとも言い難いのは事実です。この考えがコーチと選手に共有されている場合はうまく回りますが、両者に食い違いが出た場合、コーチを変えるという選択が出てくるのだと思います。

 

とりとめもなく思いついたことを、だらだらと書いてきましたが、ロシア女子の技術的早熟はこの後も続くでしょう。これに表現的成熟が加わることを切に願いながら、今後もロシア女子を見守っていきたいと思います。