A はじめに
シングルについては豊富なルール解説がある一方、ペア、アイスダンスの解説はあまり見られない。そこで今回は、今年度のルールに沿って各エレメンツについて、レベル、GOE要件を可能な限り(つまりはすべてではない)記していきたいと思う。エレメンツが多岐にわたるため、便宜上SPとFPに分けて叙述する。
B ルール
1 Jump Elements
SPでは単独のSBSが必須。基礎点はシングルと同じ。GPSとユーロの構成を見ると、ほとんど(大体9割)のカップルが3Tか3Sを選択(2017年段階)。近年ではロシアジュニアカップルを中心に3Lo、3F、3Lzを入れる場合もある。
2 Throw Jumps
ペアにしかないエレメンツ。シングルと異なり、3TTh/3STh、3FTh/3LzThの基礎点が同じ。多くのカップルが3Loか、3F/3Lzを選択(大体1:1)し、多くの加点を稼ぐエレメンツ。
3 Twist Lifts
男性が女性をほぼ真上に投げてキャッチするエレメンツ。GPS、ユーロではほぼすべてのカップルが3Tw(女性が空中で3回転する)を選択。
キャッチは女性の手、腕が男性に触れないものがよいとされており、これもレベル要件の一つになります。ちなみに高さはレベルではなく、GOEの要件の一つになります。
Twはレベルを取るのが難しいエレメンツで、Bが4組、Lv1が7組、Lv2が17組、Lv3が22組、Lv4が11組(2017年GPS、2018年ユーロSP)となっています。このエレメンツでいかにレベル、加点を取るかが、ペアSPの重要なポイントになります。
4 BoDs
デススパイラルは四種類ありますが、2021年-2022年シーズンのSPの課題はBackward Outsideです。(BoDs)
レベル要件は二つ。
①男女の低い姿勢(男性のヒップがpivot kneeより低い、かつ、女性の頭がskating kneeより低いなど)⇒前記を満たす1回転ごとにLvがひとつあがる
②難しい入りor出
見分け方(簡易版)
①へそ(おなか付近)が向いている方向
☆真上⇒outside
◎それ以外(横に向いている)⇒inside
②女性の高さ
☆高い⇒backward
◎低い⇒forward
☆outside/backward
◎inside/forward
5 Lifts (4Li)
Group Four
o Hand to Hand position (Press Lift type)
(中略)
A Group 4 Lift is any Lift with Hand to Hand hold position in which the Lady
does not rotate around the Man/in relation to the Man during the lifting process,
she can only rotate together with the Man.
つまり、手をつないで、女性が回転せずに上に持ち上がるリフトと整理できます。
(⇔5Liは女性が回転しながら上に持ち上がる)
【参考】
17-18シーズンのペアSPでは3Li(女性の臀部を男性が支える)が課題となっています。競技会でみるリフトの中では一番基礎点が低いリフトで、ほとんどのカップルがLv4を取ってきます。GOEもプラス評価を取るカップルが多いので、差が付きにくいエレメンツといえるでしょう。
6 Solo Spin Combination
二人が離れて行うスピンがSPの必須エレメンツ。多くのカップル(7割程度)がLv4をとってきて、Lv3が2割、Lv2が1割(2017-18シーズン)と、レベルは比較的取りやすいエレメンツです。
7 Steps Sequences
基礎点はシングルに同じ。大体のカップルがLv3かLv4(割合は1:1)を取ってくる。(17-18シーズン)
C 点数目安 (17-18シーズン準拠)
GPSとユーロの結果からいろいろなパターンを提示します。
1 ノーミス
(0)GOEベース
+1ベースで後半グループ、+2ベースはトップを狙えるレベル。±0ベースで中堅、-1~-2ベースで前半グループと捉えていただければOKです。
(1)実施が一番多いパターン
3T/3FTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.4
3S/3FTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.5
3T/3LoTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:31.9
3S/3LoTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.0
この構成、レベルが一つのターゲットになると思います。
すべてのエレメンツに+1がつくと4.5点、+2がつくと9.0点がGOEとして加算されます。
(2)
3T/3FTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:31.1
3S/3FTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:31.2
3T/3LoTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:30.6
3S/3LoTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:30.7
すべてのエレメンツに+1がつくと4.3点、+2がつくと8.6点がGOEとして加算されます。
TwとFiDs、StSqのレベルを落とした場合、上記のような基礎点となります。(1)と比べると大体1点ほどしか差がありませんので、GOEでの挽回が可能です。このパターンもGPS、ユーロでは多くみられました。
(3)取りこぼしあり
3T/3FTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.8
3S/3FTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.9
3T/3LoTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.3
3S/3LoTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.4
すべてのエレメンツに+1がつくと4.3点、+2がつくと8.6点がGOEとして加算されます。
2 ミスあり
ペアSPでGOEマイナスがつきやすい、SBS、Tw、Thにミスがあった場合の点数を試算します。なお(1)~(3)は上記C-1の(1)~(3)に対応します。
(1)
3T/3FTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.4
3S/3FTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.5
3T/3LoTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:31.9
3S/3LoTh/3Tw3/FiDs4/3Li4/PCoSp4/StSq4 基礎点:32.0
☆SBS、Th、Twのうち1つでミス⇒+1ベースだとTES35がぎりぎり
-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE3.1/7.2
-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE2.4/6.8
-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.7/6.1
☆SBS、Th両方でミス⇒TES35はかなり厳しい
各-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.7/3.8
各-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE0.3/2.4
各-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE-0.9/1.2
(2)
3T/3FTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:31.1
3S/3FTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:31.2
3T/3LoTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:30.6
3S/3LoTh/3Tw2/FiDs3/3Li4/PCoSp4/StSq3 基礎点:30.7
☆SBS、Th、Twのうち1つでミス⇒+1ベースだとTES35が無理
-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE2.9/6.8
-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE2.2/6.4
-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.5/6.0
☆SBS、Th両方でミス⇒TESが30点台前半となる可能性が高い
各-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.5/4.4
各-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE0.1/3.0
各-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE-1.3/1.6
(3)
3T/3FTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.8
3S/3FTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.9
3T/3LoTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.3
3S/3LoTh/3Tw1/FiDs2/3Li3/PCoSp3/StSq2 基礎点:28.4
☆SBS、Th、Twのうち1つでミス⇒TES30超えが危うくなる
-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE2.9/6.8
-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE2.2/6.4
-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.5/6.0
☆SBS、Th両方でミス⇒TES20点台が濃厚
各-1⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE1.5/4.4
各-2⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE0.1/3.0
各-3⇒そのほか+1/+2の加点で総GOE-1.3/1.6
このように見てくると、TES35点以上、TES30点台前半、TES20点台と大きく分けることができると思います。
3 細分化
S TES35点以上
(1)のパターンでGOE+1ベースだとTESが36.4~37.0になるため、ここで一つの区切りができる。(2)のパターンでGOE+2ベースだとMAX39.8なので、そこでまた区切りができる。
というわけで、
S+:35.0~37.0
S++:37.1~39.7
S+++:39.8~
と整理する。
A TES30点台前半
(1)のパターンでGOE±0ベースだとMAX32.5なので、
A+:32.5~34.9
A:30.0~32.5
とする。ちなみにTES32.5は、SBSorThで-2のGOEであっても、(2)のパターンでGOE+1がほかの要素で取れれば達成できる。
B TES20点台
(3)のようにレベルをとりこぼしたとしても、GOE±0ベースであればTESが28点以上となるため、
B+:28.0~29.9
B:25.0~27.9 *TES25はワールドのミニマムスコア
B-:~24.9
とする。
D 結論
以下の表を、今シーズンのペアSPにおけるTESの目安として提示する。
21-22シーズンでいうと、SPのTES+PCSの合計得点が
TOP15:60点台中盤~後半
TOP10:70点付近
TOP5:75点付近
TOP3:80点付近
とみてよいでしょう。